包む―日本の伝統パッケージ展

目黒区美術館が岡秀行氏(1905-1995、グラフィック・デザイナー)から
譲り受けた「日本の伝統パッケージ」コレクションの紹介でした。
http://mmat.jp/exhibition/archives/ex110210-2
その最大の特徴は、わが国の風土に育まれた自然の素材を用いた包装・容器。
杉の木や竹、笹の葉、わら、陶器、和紙、絣(かすり)など、
いずれも私たち日本人には身近な素材が使われており、なおかつ季節感をも
大切にとりいれられたものでした。
また、デザインの観点からは、
「生活の知恵の結晶」として生み出された形であるということ。
実用性に重きがあり、余計なものが省かれた、
シンプルな造形美と機能美が。
一方、クラフト(伝統工芸)と名付けてもよい、
「高度な包装技術と美的感覚」を持つものであるということ。
ここには、「包むこと」自体に重要な意味づけをしてきた日本人の美意識と、
「いかに美しく包むか」という職人や作り手たちの誇りと手わざが見られます。

約半世紀前の1960年代から70年代に
岡秀行氏は、「包む」ことに日本人ならではの「美意識」と「心」を見いだし、
その作り手たちの手わざが失われつつあることに危惧を抱き、
それらを「日本の伝統パッケージ」と名付けて写真集や展覧会として世に問いました。
戦後、日本は経済が急速に成長して大きく変動していく、
そのような時期に、大量生産や技術革新に安易に迎合するような意匠への警鐘の一つだったと言えるという。
そして、会場内の説明文がに強く惹かれました。
「作られたモノと作る人間が離れると失われるモノが多くなる。
物言わぬものたちの言葉にならない言葉を聞きながら、
感じ分ける能力をもち、厳しい自然を敵とせず、と、
してきた日本人・・・」
今回の東日本大震災とその後と重ねあわせたくなる展示でした。